[メディア] More GPU , More Power to the Artist

 


遅ればせながら『鬼滅の刃 柱稽古編』ご覧になってくださったみなさま、有難うございました。何度目かになろうことながら…柱稽古編最終話の作業ボリュームはまた”かつてない物量”との闘いとなり、デジタル映像部も各部署と並び、懸命に現場に向かいました。

登っている山の頂きが毎年高くなっているような^^、ともかくも放送を迎え、心より感謝をお伝えします。引き続きよろしくお願いいたします。今回は少々珍し目な、「現場のハードウェア」面についてのメディア記事の紹介です。

NVIDIAのハイエンドGPUがもたらすアニメ制作との向き合い方~ufotable~ (CGW.JP )

最近は折にふれ口にしてしまいますが、映像制作の難易度…特にテクニカルな要素は、毎年困難さが増している現況があります。

直近ですと無限城のような膨大なパーツをチーム運用する際などが分かりやすいケースでしょうか。肥大化したデータを取扱う際、対策としては例えば「内容をデータ上で分割する」だったりとか、「軽量化を作業前に行う」などのような事前策があり、チームで対応してきました。一方でフレキシブルなつくり方は特定のアーティストへ業務が集中するケースも増えてきて、プレイヤーの負担やパイプラインの硬直化につながり易いという課題ともなっていました。

デジタル映像部は現在25名を作業部隊となっています。規模を考慮すると、もう少し柔軟な引き出しが必要そうで、考えていました―そこで、誰にでも恩恵のあるド直球のソリューションとして、マシンパワーを上げれば相当の課題が緩和されるのではないかと。そんな折、ご縁でお誘いをいただいたNVIDIA様、HP様よりパワフルな機材一式を借り受ける機会があり、良いタイミングかなと、本検証を行うこととなった次第です。

機材グレードがあがるとどうなるか?分かりやすいところでアーティストが作業をチェックするためのプレビュー時間が短くなります。日々の現場で「作業 ⇒ プレビュー ⇒ 修正 ⇒ プレビュー ⇒ 修正…」と作業サイクルが反復されているのですが、冒頭でお話したような「物量との闘い」が始まると、掛け算式にその圧力が増加していきます。そこでGPUが有効なワークフローを持ち込んでみると、どうなるか。

グラフィックカードとRTX6000 Adaの比較強力なGPUがイテレーションの高速化を後押しし、ほぼリアルタイムで映像が更新されていきます。
グラフィックカードとRTX6000 Adaの比較強力なGPUがイテレーションの高速化を後押しし、ほぼリアルタイムで映像が更新されていきます。

 このようにブラッシュアップの時間が増加し、同じ期間でもより多くの試行錯誤が可能となり、従来より細かな調整領域にアーティストは目を向けることが出来るようになりました。

c265a / 単一アーティストがFXとCOMPをリアルタイムで管理した場合―例えば演出がチェック時にコメントした内容をその場でエフェクトから完成映像までをプレビューすることも可能になっていきます。

 強力な機材がアート制作を前進させるのか?高速化によりパイプラインにどのような影響があるのか?という観点でお話をさせていただきました。

また今回はもう一つご依頼を受けています。OpenUSDという異なるソフトウェア間で共通のファイルフォーマットについての検証も行いました。こちらはよりプロフェショナル向けの内容です。

様々なファイルがUSDを経由し他ソフトへ渡されるイメージの一つ。何でも飲み込んで吐き出せるこの通気性の良さが魅力でした。


 モデリング、エフェクト、アニメーション、コンポジットその他諸々―単一のソフトウェアで完結するのは難しくなっている昨今です。そこで上記のOpenUSDという共通のファイルフォーマットを用います。OpenUSDはPython等のプログラミング言語によって独自に機能を追加できることが特徴であり、記事でもお話したデジタル映像部内セクションのメンバー達、それに弊社エンジニアチームが協業し、ソフトウェア間を横断するパイプラインの構築を進めています。例えば、AfterEffectsは現時点では公式にはOpenUSDに未対応ですが、読み込みツールをPythonとTypeScript, C++で自作することで、3Dレイヤーへの座標やカメラの自動設定が可能になりました。

 

長くなりましたが、ハードとツール面についてのメディア紹介でした。今回お話しているのは、部長の寺尾、ツール開発やTDポジションのスタッフたちです。引き続き、エンジニアチーム、3Dアニメーターを始め、デジタル映像部内ツール開発、同・TDのポジションはオープンですので、腕に覚え有りという方はコンタクトいただけましたら幸いです。

全てはよりよい作品のために。
お読みいただきありがとうございました。

デジタル映像部

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