vsハーディング

まず、『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』無事、開演を迎える事が出来ました。日々の各地の放映を楽しんでもらえているとスタッフ一同、嬉しいです。

今回はハーディングとの戦いについて。

以前、黄金の光という投稿テキストの中で、Fate/stay night[Unlimited Blade Works] オンエアに纏わる光の表現の制約<パカチェック>について書きました。
TV放映では安全な試聴体験を確保する為に、どんな番組であれ、オンエア前の映像を必ずパカチェッカーという検出装置にかけるきまりになっています。その 機械で自動的に「ガイドライン」に会う明度彩度の変化が検知されると、フレームをダブらせたり、暗くしたりして"視覚刺激"を抑える…というのが基本的な 流れ。
このことを私達の現場的にはハーディング、といいます。 グラハム・ハーディング教授が考案したということで、そういった名前になっているそうです。このチェック(パカパカチェック=ハーディングチェック)に引っかかると、画面全体が輝度落ちした状態となり、実際にはメリハリの薄い、不自然で暗い画面になってしまいます。 アニメーションを見ていて「暗い?」と違和感を感じる事があれば、このハーディングによるものかも知れませんね。
そして当然ながら、ハーディングは僕達は望むものではなく、オリジナルの映像で物語を伝えていきたい。ですから、ハーディングチェックにかかるのは現場の意図外の状況となります。


結論からお伝えしますと『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』ではこのハーディングチェックに抵触したカットについて、
  • 放映(オンエア)専用のバージョン
  • Blu-ray Disc収録専用のバージョン
二種を用意することで、最大限「暗くなる」オンエアを回避してます。


例えばこちら。ハーディング対策済みのフレームですが、一見どこがおかしいのか、わかりませんね。

オープニングより、エドナの天響術



次にオリジナルフッテージのご紹介です。
天響術は"黄色い光"のエフェクトにより表現
Blu-ray Discに収録のオリジナルフレームをご覧になった方は、こういった輝度の高いショットの表現が異なっている事に気がつくはずです。もっと分かりやすい比較でご紹介します。



(左から)通常のハーディング対応 / ufotableオンエア専用フレーム / BD収録のオリジナルフレーム


Blu-ray Disc収録のオリジナルフレームでは、地属性のエドナのエフェクトはゲーム本編に習い、あくまで光として表現しています。そして放映verではハーディングチェックに抵触する部分のみ限定して輝度調整を行った上、ハーディング抵触部に色つけして粉塵エフェクトのようにも見える表現としています。この放送用のバージョン作成は撮影セクションで行う事もあるし、編集チームとの素材のやり取りの中で合わせ技として、編集スタッフが独自に作成したバージョンもオンエアでは使用されることもあります。人間の目にはわかりくい差もハーディングチェックでは引っかかってしまうので、その都度対応を確認…という事でどのエピソードでも裏側の調整はかなりの作業量になっています。

中にはオンエア用に根本から表現を変えたショットも。ノルミンのシールドエフェクト表現。


こうやって、普段は行わないような細部まで、撮影/編集 共にテイルズ オブ ゼスティリア ザ クロスのオンエアを盛り上げるべくハーディングとスタッフ一同、日々戦いです。

Blu-ray Discでは放映後更なる画質最適化(不自然なノイズやマッハバンドとよばれるグラデーショントラブルの最適化)をデジタルチームで行った上で高いビットレートでエンコードされた、ほぼ無劣化といえる映像が収録されています。商業的な意味ではなく、現場の映像制作スタッフの一員として、ベストな媒体で映像をご覧いただければと望んでいます。

今回は少し技術よりの、放映の裏側についてお話でした。
それでは、また!


デジタル映像部

Link
Fate/stay night[UBW]より、同一問題のお話です―「黄金の光」
テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス 作品公式サイト 
ufotable版 Blu-ray Disc Box1 受注特設サイト
ufotable版 Blu-ray Disc Box2 受注特設サイト