[メディア]ANIME NEWS NETWORKより

今年の始め、アメリカ&カナダのニュースサイトである、ANIME NEWS NETWORKより撮影監督の寺尾が取材を受け、Fate/stay night[Heaven's Feel]始め、デジタル映像部に関するいくつかのお話をさせていただきました。記事は以下に。
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Interview: Yuichi Terao, Chief of Ufotable's Digital Team
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リンクは英文ですから、簡単な翻訳文(大味です^^)を残しておきます。勉強中の学生や業界のCGや撮影職を目指す方々の参考になればと思います。


How would you describe your job to someone who is not familiar with compositing in anime? 
「撮影」というプロセスについて少し説明してもらえますか。

アニメーションの撮影監督も、照明と撮影の最終責任者という点は、実写の撮影監督と同じです。現在の"撮影"は、コンピュータ上で色々な部署からあがってきたキャラクターや背景といった「素材」を合成してひとつの「画」にする役職で、最終的な画面の”絵”を最初に見るポジション。合成プロセスの際、映像へのカラー・コレクションやフォグや火花といったエフェクト要素を追加することもあり、それが撮影監督の個性として認識されることが多いようです。
実際にはチームマネジメントや編集や演出など他チームとのコラボレーション等、画面からは見え難い仕事も多くありますが揃った素晴らしい素材達を前に、監督や演出とどうのような映像の雰囲気でドラマを語るのかを話し合う、僕にとって、撮影の仕事はアニメーション映像の中でも刺激的ですね。



ufotable digitalteam demoreel from ufotable


At what stages of production are you involved in? Do you ever give instructions to animators or storyboard artists?撮影以外、アニメ製作におけるプロダクションの段階に関わろうとしますか。例えば、原画や絵コンテ。

そもそもufotableでは、元々セクションの壁が元々薄く、撮影スタッフが撮影だけをやっているかというとそうではありません。様々なセクション同士が協力しあって、一つの映像になっているんです。これは説明が難しいです。質問に関しては、はい、です。
より高い品質のアニメを目指したいと思います。
自分に出来ることはなんでも取り組んでいきます。
それにこれまでに関わった事はありますよ。

 
アニメギルドのOPを制作しました。こちらに詳細を。



Fate/stay night: Heaven's Feel I. presage flower featured a lot more 3D backgrounds than usual. What were the difficulties in making them feel natural? 劇場版「Fate/stay night[Heaven’s Feel]はいつもより3D背景が多いらしいです。2D作画と3D背景をもっとスムーズに合成するように、何か苦労があったのでしょうか。

BGとCGのマッチングは常に心がけていることでありますから、合成は難しくありませんでした。ただ、映像をより美しく魅せる、という点でいつも以上に調整を重ねましたので、そこが大変苦労した点です。

正しくライティングが行われれば、どんなスタイルの背景にもキャラクターは融合すると思います。ただ、"Fate/stay night[Heaven's Feel]I. presage flower ”は特に3Dの背景が多かった作品です。3Dの背景をモデリングし、適切なライティングを行うまでは、CGを使った背景としては、これまでで最も時間をかけた作業でした。






Heaven’s Feel feels more like a horror story than previous iterations. What did you do to convey its creepier tone? 今までのFate/stay nightの作品よりHeaven’s Feelはホラー感が出ていますね。その雰囲気というのはどうやって作りだされるものなんですか?

脚本、コンテやキャラクターの芝居を担うアニメーター達、背景チーム、それに音楽の力をまずは紹介しておきます。その上で撮影では、影の階調を複雑に設定し、暗闇の奥に、もうひとつ空間が感じられるような映像を心がけました。また「明るい部屋の中」といったシチュエーションでも、全体的に明るい場面もあれば、電灯はついているのに、光は部屋の隅々まで届かない…どことなく闇を感じる場面を作っていきます。
振り返って、画面のどこかに、闇を感じる要素が映像でもあるカットが多いですね。




What has been your favourite scene to work on during your time at Ufotable and what is your favourite scene in Heaven's Feel I. presage flower? 自分が手がけたufotableの作品には、一番気に入ったシーンは何でしょうか。また、劇場版「Fate/stay night[Heaven’s Feel]の一番気に入ったシーンは?

スタジオで制作した作品は全て思い出深いものですので、優劣をつけることは出来ません。全てが大切な作品です。Fate/stay night[Heaven's Feel]では龍洞寺の前にセイバーの佇む雪のシーン、それに真アサシンとランサーの戦闘シーンが印象的ですね。
特に高速道路のチェイスシーンでは、ufotableの撮影CGチームとして、貴重なステップを踏むことが出来ました。




Some of your compositing work appears photorealistic. How do you balance realistic effects and anime aesthetics?デジタル映像部が手がけた画面は写真のように「フォトリアリスティック」な感じが出ていますね。「リアリズム」と「アニメ」のバランス的にどうやって作りだされますか。

リアリズムに手を加えると作為的になります。作為的なものは、「アニメ」と相性がいいんです。現実を観察しながら、「アニメ」としてのケレン味を追い求めた結果ともいえますが、現実がどのように感じられるか?風景や作品ショットの中で、僕達が、美しい、と感じられる要素をどんどん誇張していくことで映像に品格が生まれてくるように思います。

撮影監督としては、その工程が各作品の世界観にマッチするように、コントロールすることが大切です。




You’re often regarded as a major part of Ufotable’s image. What do you think about this?ufotableのイメージを考えると、寺尾さんは重要な人物だと思います。寺尾さんはどう思いますか。

原作や監督のイメージをどう「アニメ」の絵に落としこむのか?確かに、映像の色彩や空気感に対して、撮影監督として主導的に判断を行うことは多々あります。とにかく、アニメは総合芸術ですから、僕が重要かどうかは余り考えたことはありません。作品に対して、ベストを尽くすのみです。



How did you come to work at Ufotable?ufotableに入社した経緯について聞かせてください。

2003年まで大阪の大学にいて、その時先輩から薦められたのがufotableでした。オリジナルの家具や不思議な形のテーブルがいっぱいで、ここは面白そうだなと。制作進行をのぞんでいたのですが、映像を持ち込んでいたこともあり、撮影に行けと。笑

結果的に良かったですね:)




What is it like to work at Ufotable? How much do the teams collaborate?ufotableで働くのはどういう感じでしょうか。チームはどれだけ協力しますか。

ufotableの仕事はハードワークで肉体的には大変ですけど、同じくらい充実感もあります。それにいい仕事をする様々な役職の人々がスタジオのあちこちを歩いていて、よく立ち話をしています。ランダムにたくさんの話題が飛び交いますから、とても刺激されますね。
まず、社長の近藤が制作と同じスペースにいますし、例えば監督が撮影のスペースを通りかかって、スタッフといろいろなジャンルの話をします。人にもよるんですけど、そうやってたくさんの小さなコミュニケーションが発生している中で解決できる問題がたくさんあるんです。
なんだか説明が難しいですね。余りに複雑なので、「賑やかなです!」というのが僕のフィーリングです。でもそれがいいんだと思います。
スタジオの簡易マップ。TOZXのBDBOX特典用に制作した「テクニカルワークスブック」へ収録。




Have you ever considered directing an anime at Ufotable yourself?アニメの監督を務めようと思ったことがありますか。

あります。でも、役職名がそこまで重要だとは考えていないんです。

繰り返しになりますが、僕達スタジオにとってアニメを見た人が、作品に驚き、楽しんでもらうことが重要です。アニメは総合芸術ですから、本当に様々なスタッフのパワーバランスによって生まれるものです。監督―というのはその中の役割の一つですし非常に重要な役柄ですが、背景や動画チームも同じくらい、重要です。素晴らしい作品が生まれるなら、自分でなくてもいいんです。

でも、才能あるスタッフが次々にあらわれていて、徐々にデジタルチームから監督が出て来る未来も近づいているかも知れませんね。



Thank you for the interview Terao-san and we look forward to your next project!インタビューをしてくれてありがとうございます。よろしくお願いします。

こちらこそありがとうございました。