無限城とIMAX、Dolby Cinema

 


『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が公開中です。ここまで劇場でご覧の皆様、ありがとうございます。これからの皆様も、どうか本作の映画体験を楽しんでいただけますよう願っております。

2025年8月2日(土)より、劇場での上映フォーマットの一つである「ドルビーシネマ(Dolby Cinema)」での上映が開始となりました。既にスタートしているIMAX―さらにMX4D・4DXが2025年8月15日(金)〜8月21日(木)の7日間限定で先行上映。その後、8月30日(土)から全国74館でMX4D・4DX通常上映が開始となります。 

上映技術の進歩に伴い、近年は一つの映画を見るための劇場の上映スタイルには複数の選択肢が生まれています。新しい劇場フォーマットは映画体験に+αの価値を生みだし、専門的な呼称でラージフォーマット(プレミアム‧ラージ‧フォーマット∕PLF)と呼ばれます。
今回はこのラージフォーマットについて、技術的詳細さは各フォーマットの公式サイト(文末記載)に譲りつつ、1ユーザーとしての体験に端的にどのような差があるのだろうか?という点を記したいと思います。
* 執筆段階ではMX4D・4DXが未体験のため、本記事ではIMAX および Dolby Visionについてご紹介致します。
*最後にデジタル部からのコメントを掲載しています。

 

◆通常シアター

まずは基本の基本です。本作でデジタル映像部は、巨大なスクリーンで映写されることを念頭に様々な制作作業を進めて参りました。劇場パンフレットにてご紹介したように、ディティールアップと速度向上を兼ね、既存の無限城3Dモデルも劇場へ向けて全て新規に制作したものを使用し、劇場での映像体験の魅力を最大化すべく臨んでいます。一般的な劇場シアターでしたらどこでも、私たちのスタジオが制作時に想定していた映像で本作をご覧になることが出来る筈です。
また通常シアターは一般的には5.1ch/7.1chの音響システムに対応しており、映画館でしか得られないサラウンド感や迫力の音響が提供されています。


◆IMAX

 


IMAXは、圧倒的な大画面‧高精細映像‧臨場感あふれる音響で、映画の世界に“本当に入り込んだような没入体験ˮができる視聴フォーマットです。
巨大で湾曲したスクリーンが観客を囲むように配置されます。また、一般的に傾斜や段差が大きめに作られており、前席が視界の妨げとならないよう工夫されています。音響は5chと12chのサウンドシステムが採用されており、12chはより立体感と迫力を備えた音響を体験できます。IMAXというフォーマットにはさらに細かなカテゴリがあり 

  • IMAX GTレーザー
  • IMAXレーザー
  • IMAXデジタルシアター

リストの上に行くほどハイエンドかつ館数も希少です。映画でリッチな体験をしたい!もっと映画に入り込んで迫力や没入感を感じたい!という方にお勧めしたいフォーマットとなっています。

 

◆Dolby Cinema 

 


そしてドルビーシネマの特徴は「美しい映像コントラスト」「⽴体感のある⾳響」。ドルビーシネマは、Dolby社の映像フォーマットであるDolby Vision映像と、同‧⾳響フォーマットのDolby Atmosの組み合わせです。一般的に映画館で表示されている「Dolby Atmos」というのは「通常シアター+Dolby Atmos」というパターンとなります。

<映像⾯>

映画が始まる前、恐らく漆黒の闇を感じるところがDolby Cinema体験の始まりです。⽇常が遠くにいくのが肌⾝で感じられるかもしれません。恐らく⽬前の席も視認するのが難しい暗闇―それほどに「黒を黒として表現」する⼒があります。更に、「光の表現」に関してもDolbyVisionは優れた特徴を持っています。

現実世界において、室内の蛍光灯の光はおおよそ表現としては「⽩い」と思いますよね。その後、晴天の太陽をみると同じ「⽩」でも、こちらは眩しくないでしょうか?どちらもピクセルでいえば「⽩っぽい発⾊」の表現に収束しますが、本来の直感的なˮまぶしさ感ˮは随分異なるはずです。その差をしっかり表現できるのが「Dolby Vision」である―以上が本テキストでのご紹介となります。
より現実に近い=階調が豊富であるということは、「呼吸エフェクト」「無限城の⾏灯の光」「キャラクターの瞳に映るハイライト」などなど、光の反射や発光に纏わる表現が複雑に絡み合う映像の中で、それぞれの視認性をあげ、ショットの輝度バランスを演出していくことが出来るようになっていきます。「光の中の光」なども難しい表現です。この点でDolby Visionは頼もしい働きをしてくれています。
*本作のドルビーシネマは、フォーマットを活かすために、デジタル映像部としても新たな試みを⾏いました。どこかの機会にご紹介できれば幸いです。

更に、

<⾳響⾯>

の紹介です。まずは概要から。

Dolby Atmos(ドルビーアトモス)は、映画館の中で“⾳が頭上や背後、あらゆる⽅向から動くˮことで、まるで映画の中にいるような臨場感を体験できる最新の⽴体⾳響システムです。

引用元サイト / Dolby Japan 公式サイト) 

また3次元に⾃由配置された20〜64個のスピーカーから⾳が⾃由⾃在に発⽣/移動することにより、実際に体験すると⾳の⼀つ⼀つがきちんと分離され、今まで聞こえなかったような⾳響効果に気づかされます。これは例えば、⼤きな⾳が複数同時に鳴っても、飽和せずきちんと⽿に⼊るといったことで実現されます。これはかなり⾮⽇常的な体験となりますね。

 

 Dolby Atmos紹介映像

  

また一部映画館にはAVP(Audio Visual Pathway)が設置されます。


このようにラージフォーマットはそれぞれの特性にあった拡張体験を提供します。どれも甲⼄つけがたい魅⼒があります。ご紹介はここまでです。いかがでしょうか?


NOTE

デジタル部よりコメントです。

『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は劇場体験に適応している映像演出、音響演出が満載の映画です。標準的なシアターではもちろん、ラージフォーマットフレンドリーな映画でもあります。

IMAXはネーミングの分かり易さもあり、弊スタッフにもファンが多いです。一方で一口に傾斜やスクリーンサイズ、、といっても劇場によってさまざまですので、どのようにお伝えするか迷ったのですが、未挑戦の方にやはり一度ご覧になっていただくのは意味があるだろうとご案内いたしました。最大スペックのIMAX GTは日本にまだ2館しかありません。ただ異次元の体験がそこにはあります。IMAX Laserの鮮明さも素晴らしいです。是非。このようなスタイルの上映館が今後増えていくと、制作チームとしても嬉しいです。

Dolby Cinemaは美しい映像を特別な劇場環境でしか体験できないスタイルで提供してくれますね。映像での関わり方については模索の最中です。チャレンジについては別の機会に。ただ、Dolby Cinemaでしか得られない鮮明さが在り、代えがたい美しさとなっているのは間違いありません。HDRのハイコントラストについては是々非々の議論があるのですが、本作においては間違いなく付加価値となっていると感じました。

以下は試写にいったデジタル映像部スタッフのドルビーアトモスに関するメモです。

あるシーンで、炭治郎のセリフが無限城の中で自然に反響して聞こえました。そうすると、炭治郎の声はスクリーンから、反響はフレーム外の無限城から聞こえてくるのですが、その反響具合が非常に自然で、上下左右どころか空間全体から耳に入ってくるように感じられるのです。そこで「無限城に入った」感覚が押し寄せるのが大変心地よかったです。

以上、ありがとうございました。どこでも映像や音楽に触れられる今でこそ、「only in theaters(映画館でのみ)」とは何だろうかと考えてしまいます。その答えを、一人一人のお客様がスクリーンに足を運んで確かめて、そういった「特別な何か」を見つけていただけたら、私たちデジタル部チームとしても大変嬉しいです。本エントリーが劇場版『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』のよき映画体験の一助になれば幸いです。

参照:

IMAX® is a registered trademark of IMAX Corporation.
Dolby Laboratories,Inc.Allrights reserved


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